研究
低次元のユークリッド空間に埋め込まれた物理ネットワークと、最短経路距離に基づくボックス被覆によってフラクタル次元が定義されるネットワークを対象に、ネットワークの構造と動力学を研究しています。 この二つの対象を具体例として、ネットワークの構造、幾何学、動力学の普遍的性質や関係を探っています。
物理ネットワーク
物理ネットワークは、空間的な広がりをもつ要素からなり、低次元のユークリッド空間に埋め込まれています。 それらの空間的・物理的な制約が、ネットワークの構造、ノードの性質、集団動力学に及ぼす影響を研究しています。
構造的性質
多くの実在の物理ネットワークで観測される次数と体積の相関、すなわちノードの大きさと結合の本数や強さとの関係を研究しています。 この相関は、物理的な制約をネットワーク表現に組み込むことを可能にし、物理ネットワーク上の輸送や集団動力学をモデル化するうえでの出発点となります。(Yamamoto, Bonamassa, and Pósfai 2026b, 2026a)
動力学
ネットワークの物理的実体が、拡散や局在、同期に及ぼす影響を調べています。
拡散と局在
ノードの体積などの物理的性質は、拡散における滞留時間などに影響します。 ネットワークの物理的性質を取り込んだダイナミクスでは、次数と体積の比が、物理ネットワークのラプラシアン固有モードの局在を特徴づける重要な量であることを示しました。 解析的なモデルやランダムネットワーク、実データに基づく物理ネットワークを用い、次数と体積の相関によって、ネットワーク構造のみを考慮した場合と拡散・局在現象がどのように変化するのかを調べています。(Yamamoto, Bonamassa, and Pósfai 2026b, 2026a)
同期
物理的な制約下の結合振動子ネットワークで、同期が生じる仕組みを研究しています。 また、スピントロニクスの実験研究グループと、スピンホールナノ発振器(spin Hall nano-oscillators)に関する共同研究を行っています。
フラクタルネットワーク
有限のフラクタル次元をもつ複雑ネットワークを研究しています。 フラクタル次元は、ネットワーク全体をボックス(部分グラフ)で覆うのに必要な最小ボックス数と、ボックスの直径とのスケーリング関係から定義されます。 ネットワーク内の位置や観測スケールによって次元がどう変わり、輸送にどのような影響を与えるかを調べています。
構造的性質
バイフラクタル性(bifractality) 幅広い種類のフラクタル・スケールフリーネットワークで、ハブの近傍と、ハブから十分に離れた領域とでは、局所フラクタル次元が二つの異なる値をとることを見いだしました。 解析計算と数値計算の結果、このバイフラクタル性が、スケールフリー性とフラクタル性を併せもつネットワークに広く見られる性質であることを示唆しています。(Yamamoto and Yakubo 2023)
構造のクロスオーバー 臨界ランダムネットワークでは、観測する距離スケールが大きくなるにつれて、近傍に含まれるノード数の増え方が、次数に依存する局所的な振る舞いから大域的なフラクタル・スケーリングへとクロスオーバーします。 パーコレーションの臨界点における最大連結成分の長距離次数相関から、このクロスオーバーを解析的に導いています。(Mizutaka, Yamamoto, and Yakubo 2026)
動力学
ランダムウォーク
フラクタル・スケールフリーネットワーク上のランダムウォークを通して、構造のバイフラクタル性が二つの局所スペクトル次元として現れる一方、ウォーク次元は出発点によらないことを示しました。 局所スペクトル次元は、出発点への帰還確率が時間とともに減衰する速さを P_i(t) \propto t^{-d_{\mathrm{s}}(i)/2} によって特徴づけます。 したがって、ネットワークサイズを大きくする極限では、ハブを出発点とする場合と、ハブから十分に離れた非ハブノードを出発点とする場合とで、局所的な輸送特性が異なります。(Yakubo, Shimojo, and Yamamoto 2024)
その他の研究
上述以外のこれまでの研究で得られた成果を紹介します。すべての論文は論文一覧(英語)をご覧ください。
三体相互作用の推定
三体相互作用(triadic interaction)は、二つのノード間の結合が第三のノードによって制御される相互作用です。 第三のノードの状態に応じて、残る二つのノードの状態間の相互情報量がどう変化するかを調べ、三体相互作用の候補を推定する手法を開発しました。(Niedostatek et al. 2025)